愛捨てた愛してた

iPhoneを両手で扱うくらい繊細になれたら人生は変わっていたのかもしれない。

歯ブラシを取る時に近くにあったお父さんのカミソリで指を切ってしまった日から歯ブラシを取る時はカミソリに当たらないように慎重になる。ちょっとだけ怖くなる。指を切るまではカミソリなんて視界に入ってこないほどサッと歯ブラシをとることができていたのに。どんどんこうやって痛みを知って物事を恐れて不器用になっていくのだろうか。やるせない。本当にやるせない。
久々にiPhoneが光ってあの人からの連絡。意識すればするほど言葉が出てこない。向こうも同じ。用事なんてない。たいして盛り上がらないメールをぽつぽつと続けて終わり。そりゃそうだ、二人で会ってる時カフェで二時間無言だったしそれがメールになったからって言葉がでてくるわけじゃない。でも、それでも、あの人と同じ空間で同じアイスカフェラテを飲んでた二時間は私にとっては特別な思い出になってしまった。久々の連絡だって舞い上がるくらい嬉しい。だからこそまた更に言葉を吐けないようになってしまった。あの人に触れると私はどんどん不器用になってく。嬉しいが嬉しいと言えない。悲しいが悲しいと言えない。でも、またいつかあの人に会えた時にお久しぶりです、って一言笑って言えたらそれでいいかなって思ってしまうんだ。